キリンホールディングス(株)の新規事業「エレキソルト」が求めた物流倉庫の条件とは

キリンホールディングス株式会社 ヘルスサイエンス事業本部 ヘルスサイエンス事業部 新規事業グループ エレキソルト事業責任者 / 主務 佐藤 愛 様

ビールや清涼飲料に加え、医薬・ヘルスサイエンス分野でも幅広く事業を展開する総合飲料・食品企業、キリンホールディングス株式会社。近年は健康領域への取り組みを強化しており、独自の減塩技術を活かした「エレキソルト」を開発し食の楽しさと健康を両立させる新たな価値創造に挑んでいます。今回はエレキソルト事業責任者 佐藤 愛 様にエレキソルト開発の秘話や新商品のご紹介、NEOlogi導入の経緯をお伺いいたしました。

趣味のゲームが結び付けた健康課題を解決する最新技術

ーまずは、エレキソルトについてお伺いできますか。

私たちがヘルスサイエンス領域の新規事業として立ち上げたプロダクトで、減塩の推進や継続を目的とした“食事をサポートするための食器”になります。

ー「キリン」と聞くとビールや飲料水のイメージが強いのですが、もともとヘルスサイエンス領域の研究をされていたのでしょうか。

もともとは飲み物の研究を行っており、研究所で勤務しておりました。ベースとしては飲み物周りの新規事業、食品素材研究をやっていました。

ーエレキソルトを開発されたきっかけを教えてください。

食品素材の研究で病院の先生と共同研究をしていたのですが、先生から減塩を続けて貰えないという話を聞いたり、身近にいる患者さんからも「減塩は重要なのはわかっていても、味がおいしくなくて続けられない」という声を聞いたことをきっかけに、それらの課題を何とかする技術がないかと探索したのがエレキソルト開発のきっかけになりました。

ーエレキソルトにはどのような技術が使われているのでしょうか。

いろいろな技術を探索していたのですが、食品メーカーなので最初は食品素材を探していました。減塩の食品素材や減塩調味料は、既に食品メーカー様の努力で非常においしいものが数多く存在していたので、アプローチを変えて、そのような食品素材・調味料と組み合わせて使うことで、よりお食事がおいしく・楽しくなる方法がないか探索することにしました。

ゲームが好きなのでバーチャルリアリティの学会とか、ゲーム系の学会などにも参加することがありまして、バーチャルリアリティの技術は視覚や聴覚だけでなく、味覚や嗅覚の技術も技術発展が進んでいることを知りました。明治大学の先生が電気の力で食事の味を変化させるという技術を学会の発表で知り、そこから明治大学との共同研究がスタートしました。

ー学会での発表と佐藤さんの課題が結びついて、エレキソルトが生まれたということですね。

そうですね、おっしゃる通りで、もともとお声がけした時には先生ご自身もこの技術を社会実装したいという思いをお持ちだったんですけど、まだまだ基盤研究の段階だったので、そこからお食事の中で使いやすいものはどんなものだろうかという追求をする中で、プロダクトの開発が進んでいきました。

物流倉庫は経験値と柔軟性が決め手に

ーエレキソルト事業では物流倉庫をどのような基準で選定されたのでしょうか。

我々としても電気機器の販売実績が多くあるわけではないので、電気機器の取り扱いに長けている、また新規事業で出荷数量も少ない数量から伸びる可能性もあるという状態で柔軟に対応頂ける、かつ同梱物の対応やプロダクトの変更に対応頂けること、海外展開も見据えているので海外対応にも強い倉庫という基準で選定しました。

ーエレキソルトのECカートとNEOlogiの連携など準備期間中にシステム開発を行いましたが弊社の対応はいかがでしたでしょうか。

我々の要望に合わせてすごく柔軟にご対応いただいて操作のしやすいシステムになりました。また改修も速かったので大変ありがたかったです。今はECサイトだけで販売していますが、これから販路が増える予定で店舗への納品(toB対応)や、チラシの管理など徐々に対応することが増えてまいります。そこについてもいろいろとご相談させていただきたいと思います。

ー梱包についてはマニュアルをご用意頂いておりますが梱包と発送で重要視されている点を教えてください。

単価の高い製品になるので、お客様に喜びをもって開けていただくということを重視しております。テスト出荷の際に実際に受け取った荷物を開けさせていただいて、商品やチラシを入れる順番を調整させていただきました。マニュアルを用意したのはそのためでして、梱包についても柔軟にご対応いただけています。

ー倉庫環境についての印象を教えてください。

視察に伺わせていただいたメンバーのみんなが驚いたのですが、すごく高いレベルで管理をされていてシステムを活用しながら作業者のミスが起こらない仕組みを作られているので、非常に安心感を持って物流業務をお願いできるという印象でした。

ーNEOlogiをご利用されてから感じられたメリット・デメリットを教えてください。

そうですね、デメリットらしいデメリットは特にはないんですけど、メリットとしましては非常に感覚的に使えるといいますか、我々もミスが起きないようにマニュアルを作成しているんですけど、非常に画面がわかりやすくて、どこに何があるかっていうのがわかりやすいのと、あとは我々が作業ミスをしないようなボタン配置になっていたり、これ押さないと次の画面に進まないであったり、必須の部分は押さえてくださっているので非常に使いやすいです。

あとは、稼働前に開発を依頼した在庫レポート機能についても非常にわかりやすくて、どこにいくつ出荷したというのがダッシュボードで確認できるのが大変ありがたいです。

ーカスタマーサポートの対応は如何でしょうか。

普段メールでやり取りさせていただいているのですが、困ったらすぐにカスタマーサポートにご相談させて頂いております。お客様の都合によってキャンセルさせてほしいというケースもあるのですが、出荷指示が進んでいる状況でも対応して頂けます。極力お客様にご負担がかからないようにという想いがありますので、素早く対応頂けて本当にありがたいです。

待望のカップが新登場。スプーンもデザイン刷新

ーエレキソルトがリニューアルと新商品を発売されたとのことですが、詳細を教えて頂けますか。

まず、カップ形式で大きく製品形態を変えた商品を9/9に新発売いたしました。過去にお椀型なども開発していたんですけど、安全性であったりご家庭の中で洗いやすさ、耐久面がなかなかクリアできなくて、お椀型の開発が少し難航しておりました。ただ、お客様から日常の汁物で使いたいというご要望が非常に多かったので、外部の企業やプロダクトデザイナーの方にご協力頂きカップ型エレキソルトを商品化することができました。日常の食生活で使いやすいようなプロダクトとして新発売をいたしました。

カトラリーというのは情緒価値も重要になってくるので、このカップと合わせてのデザイン変更ということで、スプーンの方も大きくブラッシュアップをして新発売をすることにいたしました。

ー減塩と聞くと味噌汁やラーメンなどの汁物がイメージされるのでカップの発売は嬉しいですね。

やはり減塩が必要になった場合も、食べ物ってなかなか減塩にしづらいところがありまして、ラーメンや汁物を控えなさいや、食べること自体を控えましょうみたいなことを言われてしまうことも多いんですけど、汁物自体は野菜やお肉をしっかり取れるような食生活に重要なものになっているので、そういうものを健康上課題があっても食べ続けられるようにという想いも込めて作っております。

楽しく減塩が続けられるエレキソルトを海外に展開予定

ー実際にエレキソルトを使われたお客様の感想などありましたら教えて頂けますか。

お客様からの嬉しいお声としては食事が楽しくなったであったり、ギフトで購入される方も多いので、お送りされたお母様がすごく食事を楽しそうに減塩を続けられるようになったという嬉しいお声がありました。エレキソルトは医療機器ではないのですが、楽しく減塩を続けられて血圧が下がったとのお手紙もいただいたこともありました。

ただ、電気による味の変化は個人差が大きく、体感が低いというお声であったり、使いにくいという厳しいお声もいただいているところです。持ちづらさであったり電流が流れるようにゆっくりめに食べていただくなどのコツがあったりするのですが、お客様の声を参考に新商品では使いやすさなどが改善されています。

ー最後に、今後のエレキソルト事業の展望を教えてください。

エレキソルトは減塩をサポートするブランドとして立ち上げてまいりました。今後はより使いやすいものになるように食器カトラリー形態で開発を続けてまいりますし、海外からのお客様からも非常にお引き合いをいただいているので、海外での展開というのも急いでやっていきたいなと思っています。

特にアジア圏を中心にしょっぱいものが好きな食文化を持っているので、アジア圏の国々から事業展開を考えています。ただ、アメリカとかヨーロッパなど健康意識が高い国々についても食塩量を気にされていて、自分の国は食塩摂取量が多いということをどの国もおっしゃられるので、他の国についても早期展開していきたいと思っています。

取材協力:キリンホールディングス株式会社 佐藤 愛 様

取材日:2025年8月現在の内容になります。