フランス新関税手数料と越境EC対応策

2026年3月1日より、フランス宛てのEU域外から発送される150ユーロ未満の小包に対し、1品目(HSコード)ごとに2ユーロの「税関管理手数料」が新たに課されることになりました。日本からフランスへ商品を販売している越境EC事業者にとって、見過ごせないコスト増加要因です。イタリアも同様の制度を導入予定でしたが、2026年6月以降に延期が決定しています。本記事では、フランスの新制度の詳細から日本のEC事業者への影響、そして今すぐ取るべき対応策まで詳しく解説します。

フランス税関手数料の全体像を解説

まず、今回のフランスの新制度がどのようなものか、その概要と背景を整理します。制度の仕組みを正しく理解することが、適切な対応策を講じるための第一歩です。

税関管理手数料とは?制度の全体像

税関管理手数料(frais de gestion douanière)とは、EU域外から発送されるフランス宛ての小包に対し、税関手続きにかかる行政コストを荷受人または送り主に負担させる新たな制度です。2026年3月1日より正式に施行されました。

この制度が導入された背景には、中国系大手ECプラットフォーム(Temu・Shein・AliExpress等)による小口荷物の爆発的な増加があります。EU域外からの150ユーロ未満の小包はこれまでVAT(付加価値税)の免税措置が適用されていましたが、その件数が増加し続けたことで、フランス税関の処理能力が逼迫しました。人員・システムへの投資コストを利用者に一部転嫁する形で本制度が設けられました。

手数料は1品目(HSコード)ごとに2ユーロが課されます。1つの小包に複数のHSコード品目が含まれる場合は、品目数分の手数料が加算される点に注意が必要です。

課税対象になる条件を整理する

今回の税関管理手数料が課される条件は以下の通りです。

  • 発送元:EU域外(日本・中国・米国・韓国など)
  • 配送先:フランス国内
  • 申告金額:150ユーロ未満の小包
  • 課金単位:HSコード(品目番号)1つにつき2ユーロ

150ユーロ以上の荷物については、従来通りのVAT・関税の課税対象となり、この手数料の適用外となります。また、B2B取引(法人間の商取引)については適用外となるケースもあるため、販売先が個人か法人かを把握しておくことも重要です。

なお、フランス国内に倉庫を持ち、EU域内から発送するケースは対象外です。EU内に物流拠点を設けることでこの手数料を回避できる可能性があります。

手数料の計算例と実際のコスト

具体的な計算例で確認してみましょう。

注文内容 HSコード品目数 税関管理手数料
Tシャツ1枚(単品) 1品目 2ユーロ
Tシャツ+ジーンズ+スニーカー 3品目 6ユーロ
アクセサリー5種類セット 5品目 10ユーロ

2ユーロは日本円換算で約320円(2026年3月時点レートを参考)です。1件あたりのコストは小さく見えますが、月間100件のフランス向け出荷があれば月額約32,000円のコスト増加となります。取扱品目数が多いEC事業者ほど、影響は大きくなります。

日本EC事業者への影響を徹底分析

フランスの新制度は、日本からEU向けに販売を行っているEC事業者に直接的な影響を与えます。コスト面・業務面・リスク面から詳しく見ていきましょう。

コスト増加の試算と価格設定の影響

今回の手数料は、送料・VAT・関税とは別に発生する新たなコストです。EC事業者としては、この手数料をどう扱うかを早急に決定する必要があります。主な選択肢は以下の2つです。

  • 購入者に転嫁する:チェックアウト時に「フランス向け通関手数料」として明示し、購入者に負担してもらう
  • 事業者側で吸収する:商品価格に組み込むか、利益を圧縮して対応する

購入者への転嫁は透明性が高い反面、カゴ落ち(購入離脱)のリスクが高まります。一方、事業者側での吸収はコスト増加を直接受けることになります。フランス向けの販売規模・利益率・競合状況を踏まえた上で、慎重に判断しましょう。

なお、購入者に手数料を告知する場合は、商品ページや購入フロー内にわかりやすい説明文を追加することで、クレームや返品のリスクを大幅に下げることができます。

HSコード登録の正確性が問われる

今回の手数料はHSコード(品目番号)単位で課金されるため、通関申告書に記載するHSコードの正確性がこれまで以上に重要になります。

HSコードとは、貿易取引における商品分類のための国際統一コードです。誤ったコードを申告した場合、通関トラブルや追徴課税が発生するリスクがあります。また、本来1品目としてまとめられる商品を複数コードに分けて申告してしまうと、不必要に手数料が増加する可能性もあります。

取扱商品が多いEC事業者は、この機会に全商品のHSコードを棚卸しし、正確な分類ができているか確認することを強くおすすめします。不明な場合は通関士やフォワーダーに相談しましょう。

通関フロー・返送リスクへの備え

新たな手数料制度の導入により、フランス税関での処理手順が変わり、通関に要する時間が延びる可能性があります。特に制度開始直後は混乱が予想されるため、納期に余裕を持った発送スケジュールを組むことが大切です。

また、手数料の支払い拒否や通関書類の不備による返送・廃棄リスクにも備えておく必要があります。返送が発生した場合の返金ポリシーや再発送対応について、あらかじめ方針を決めておきましょう。

イタリア延期とEUの規制動向

今回の動きはフランスだけの問題ではありません。EU全体として越境ECへの規制強化が進んでいます。最新の動向を把握しておきましょう。

イタリアの導入延期と今後の動向

イタリアも同様の税関管理手数料の導入を予定していましたが、2026年6月以降に延期することが発表されました。延期の背景には、制度設計・システム整備・事業者への周知期間の確保が必要と判断されたことが挙げられます。

ただし「延期」はあくまで「見送り」ではなく、導入の方向性は変わっていない点に注意が必要です。イタリア向けにも同様のコスト増加が将来的に発生することを前提に、今から準備を進めておくことが賢明です。

イタリアはEUの中でもEC市場の成長が著しく、日本の食品・ファッション・アニメグッズなどのカテゴリで需要が高い国です。対応準備の先送りはビジネス機会の損失につながりかねません。

EU全体での小口免税廃止の流れ

そもそも今回の動きは、2021年7月に施行されたEU VATルールの改正が発端です。それ以前は22ユーロ以下の小包にはVATが免除されていましたが、改正によりこの免税措置が廃止され、EU域外からのすべての輸入品にVATが課されるようになりました。

また、EU域外の事業者がEU全加盟国向けの輸入VATを一括申告・納付できるIOSS(Import One-Stop Shop)制度が同時に導入されています。IOSS登録を行うことで、購入者がVATを現地で支払う手間が省け、スムーズな通関が可能になります。フランス向けの越境EC強化を検討している場合は、IOSS登録の有無も確認しておきましょう。

EU全体として「小口荷物への課税強化・手続き厳格化」の方向性は明確であり、この流れは今後も継続すると見ておく必要があります。

今後の越境EC規制強化の見通し

フランス・イタリアに続き、他のEU加盟国でも類似した手数料制度の導入が検討される可能性があります。また、関税申告の電子化・ICS2(輸入管理システム第2フェーズ)の本格運用など、EU全体の通関手続きのデジタル化も進んでいます。

越境EC事業者にとって、EU向けビジネスは今後も規制対応コストが増加するフェーズに入ったと理解し、中長期的なコスト構造の見直しと柔軟な対応体制の整備が求められます。

越境EC事業者が取るべき対応策

フランスの新制度を踏まえ、今すぐ着手すべき対応策を具体的に解説します。

HSコード管理体制を今すぐ整備

最初に取り組むべきは、全取扱商品のHSコード棚卸しと正確な登録です。ECシステム上の商品マスタにHSコードが登録されていない、または古いコードのままになっているケースは少なくありません。以下のステップで整備を進めましょう。

  • 商品マスタの全件確認・HSコード登録状況の把握
  • 未登録・不明確なコードは通関士・フォワーダーに照会
  • 商品カテゴリごとに標準コードを設定し、新規商品追加時のルールを整える
  • 定期的な棚卸しのスケジュールを設ける

HSコードの正確な管理は手数料の適正化だけでなく、通関トラブルの防止・税関調査対応にも直結します。

価格・送料設定を見直すポイント

手数料の発生を踏まえ、フランス向けの価格・送料設定を見直すことが必要です。主要なECカートシステム(Shopify・WooCommerce等)では、国別・地域別の送料設定が可能です。フランス向けに専用の送料ルールを設け、手数料分を組み込んだ設定にしましょう。

購入者への説明が必要な場合は、カート画面・商品ページ・FAQページなどに「フランス向け注文には通関手数料が発生する場合があります」といった案内文を追加することをおすすめします。事前の説明があることで、購入後のクレームを大幅に減らせます。

また、販売価格を149ユーロ以下に調整している場合、今後の規制強化(手数料上昇や対象範囲の拡大)を見越して価格帯の再設計も検討しておきましょう。

物流代行・フォワーダーとの連携強化

EU向け越境ECの複雑な通関対応を自社だけで行うことには限界があります。EU対応に強い物流代行業者やフォワーダーとの連携を検討することで、通関書類の作成・HSコードの確認・手数料の精算処理などをまとめて委託できます。業者を選ぶ際は以下の点を確認しましょう。

  • フランス・EU向けの通関実績が豊富か
  • IOSS登録のサポートが可能か
  • HSコード管理・通関書類作成を代行できるか
  • 返送・未配達発生時の対応フローが整っているか

NEOlogiでEU越境物流をまるごと解決

フランスの新手数料制度への対応や、EU向け越境ECの通関・物流業務に課題を感じている方には、クラウド物流アウトソーシングサービス「NEOlogi」のご活用をおすすめします。

  • 国内配送から海外配送・越境ECまで一貫して対応
  • Shopify・BASEなど主要カートシステムとの自動連携
  • 入庫・保管・ピッキング・梱包・発送までワンストップで対応
  • 専任担当者によるきめ細かいサポート体制

物流業務をNEOlogiに任せることで、複雑化するEU向け越境ECの発送対応をスムーズに進めることができます。まずは無料相談からお気軽にお問い合わせください。

まとめ

2026年3月1日よりフランス宛ての150ユーロ未満の小包に、HSコード1品目ごとに2ユーロの税関管理手数料が課されるようになりました。イタリアも導入延期中であり、EU全体での規制強化は今後も続く見通しです。EC事業者はHSコード管理の整備・価格設定の見直し・物流代行との連携強化の3点を中心に、早急に対応を進めることが求められます。変化する規制環境に先手を打つことが、EU市場での競争力維持につながります。

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株式会社ネオ・ウィング
 
黛 将広

株式会社ネオ・ウィング 取締役 / 物流代行サービス「NEOlogi」 責任者

EC運営の現場経験と、NEOlogiで積み上げたシステム開発の知見を活かし、物流業務の効率化・DX推進をトータルでサポートします。

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