物流倉庫の火災リスクと対策!主な原因や消防法での規定を解説

EC事業者様や輸出入担当者様にとって、倉庫に保管されている在庫は、販売機会そのものであり、決して失ってはならない大切な「資産」です。 しかし、ニュースなどで大規模な物流倉庫の火災を目にするたび、「もし自社の荷物が燃えてしまったら…」と不安を感じることはないでしょうか?

物流倉庫の火災は、商品の焼失による直接的な損害だけでなく、配送の遅延、顧客情報の喪失、そして何より社会的信用の失墜という、取り返しのつかない事態を招きます。 「うちは大丈夫だろう」という油断が、最も危険なリスク要因です。

本記事では、物流のプロフェッショナルであるNEOlogiが、物流倉庫で火災が発生する具体的なメカニズムや原因、そして消防法に基づいた義務と対策について徹底解説します。 自社の倉庫管理の見直しや、アウトソーシング先の選定基準としてお役立てください。

物流倉庫の火災が発生する主な原因

国土交通省や消防庁のデータを見ても、物流倉庫の火災原因は多岐にわたりますが、その多くは「ヒューマンエラー」と「設備の不備」に起因します。物流倉庫には「可燃物(段ボール等)が多い」「無人の時間帯がある」といった特有のリスク環境があります。

ここでは、特に発生件数が多く、EC事業者が警戒すべき5つの原因について詳しく解説します。

電気関係のトラブル

倉庫火災の原因として常に上位に挙がるのが、配線や電気機器によるトラブルです。 その中でも特に恐ろしいのが「トラッキング現象」です。

  • トラッキング現象とは: コンセントとプラグの隙間にホコリが溜まり、そこに湿気が加わることで火花放電(スパーク)が起き、発火する現象のこと。

物流倉庫は段ボールなどの紙類を大量に扱うため、ホコリ(紙粉)が発生しやすい環境にあります。さらに、大型の棚(ラック)の裏側などは掃除が行き届きにくく、気づかないうちに発火の準備が整ってしまうのです。 また、タコ足配線による過電流(オーバーヒート)や、コードがフォークリフト等に踏まれて損傷することによる「短絡(ショート)」も、火災の直接的な引き金となります。

リチウムイオン電池の発火

近年、EC物流において急増しているのが、モバイルバッテリー、ハンディファン、電動工具などに使用される「リチウムイオン電池」による火災です。

リチウムイオン電池は、強い衝撃が加わったり、過充電状態になったりすると、内部で化学反応を起こし「熱暴走」と呼ばれる現象を引き起こします。

  • 熱暴走の特徴: 一度発火すると周囲の酸素を使わずに燃え続けるため、爆発的な燃焼を起こし、通常のスプリンクラーや消火器では鎮火しにくい。

特に海外からの輸入品(越境EC商材)などで、日本の安全基準(PSEマーク等)を満たしていない粗悪品が混在している場合、保管中に自然発火するリスクも高まります。他の荷物に延焼しやすいため、非常に危険です。

放火およびタバコの不始末

人的要因の中で最も悪質なのが「放火」であり、最も防げるはずなのが「タバコの不始末」です。 消防庁の全火災原因データにおいて、「放火(疑い含む)」は常に上位を占めています。

物流倉庫は夜間や休日に無人になることが多く、敷地が広大で死角ができやすいため、セキュリティが甘いと侵入を許してしまいます。また、倉庫の建屋外周にパレットや段ボールなどの可燃物を放置していると、放火犯の標的になりやすくなります。

一方、タバコの不始末は従業員のモラルに依存します。「指定場所以外での喫煙」や「吸い殻の不完全な消火」が、ゴミ箱内の紙くずなどに引火し、数時間後にくすぶり続けてから炎上するケースも後を絶ちません。

電気設備の老朽化

建設から年数が経過した倉庫では、電気設備の老朽化が深刻なリスクとなります。 天井裏の配線、照明器具の安定器、分電盤などが経年劣化により絶縁不良を起こし、漏電やスパーク(火花)を発生させます。

特に、古い照明器具や空調設備を使い続けている場合、内部のコンデンサーやコイルが劣化して異常発熱することがあります。これらは目に見えない場所(壁の中や天井裏)で進行するため、発見が遅れ、気づいたときには天井全体に火が回っているという事態になりかねません。 定期的なメンテナンスを怠ることは、倉庫内に時限爆弾を抱えているのと同じです。

保管されている荷物の自然な発火

「火の気がないのに燃え出す」のが自然発火の恐怖です。 特定の化学物質や油分を含んだ布などは、酸化反応によって熱を蓄積し、発火点に達すると燃え出します。

例えば、アロマオイルや塗料、ワックスを拭き取ったウエス(布)を山積みにしていると、中心部に熱がこもり自然発火することがあります。また、粉塵が舞っている環境下での「粉塵爆発」も広義にはこれに含まれます。 保管する商品の性質(危険物か否か)を正しく理解し、適切な温度・湿度管理を行わないと、商品そのものが火種となってしまいます。

物流倉庫の火災対策

火災リスクをゼロにすることは難しいですが、適切な対策を講じることで発生確率を下げ、万が一の際の被害を最小限に抑えることは可能です。 ここでは、物流倉庫が取り組むべき具体的な4つの対策を紹介します。

スプリンクラー等の消火設備の設置

火災発生時、初期消火の成功率を左右するのがスプリンクラー等の設備です。 特に大規模な倉庫や、天井が高い(ラックを組んでいる)倉庫では、人間による消火活動は困難を極めます。スプリンクラー設備は、熱や煙を感知して自動的に散水するため、無人の時間帯でも延焼を食い止める「最後の砦」となります。

また、扱う商品(リチウムイオン電池や禁水性物質など)に応じて、泡消火設備や不活性ガス消火設備など、適切な種類の消火設備を選定することも重要です。水が使えない物品に水をかけると、かえって火災を拡大させる恐れがあるためです。

点検・清掃を徹底する

地味ですが最も効果的な予防策は、「5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」の徹底です。 前述したトラッキング現象を防ぐためには、コンセント周りの定期的な清掃が不可欠です。また、配線コードが荷物の下敷きになっていないか、機器に異常な熱がないかといった日常点検をルール化しましょう。

【点検・清掃のチェックリスト例】

  • コンセント周辺にホコリが堆積していないか
  • 配線コードが家具や荷物に踏まれていないか
  • 分電盤の中に異物が入り込んでいないか
  • 照明器具が点滅したり、異音を発したりしていないか
  • 倉庫の外周に燃えやすいものが放置されていないか

これらを定期的にチェックシートを用いて管理し、異常があれば即座に交換・修理を行う体制を作ることが重要です。

倉庫内の温度や湿度の管理を怠らない

自然発火や静電気火災を防ぐためには、倉庫内の環境管理が欠かせません。 特に夏場は倉庫内の温度が急上昇し、可燃性物質の気化や化学反応を促進させるリスクがあります。適切な換気システムや空調設備を導入し、温度を一定以下に保つことが求められます。

また、乾燥する冬場は静電気が発生しやすくなります。静電気のスパークが可燃性ガスや粉塵に引火するのを防ぐため、加湿器の設置やアース(接地)の確保といった湿度管理・静電気対策も重要です。 EC物流では多種多様な商材を扱うため、商品特性に合わせたゾーニング(保管場所の区分け)も有効な対策です。

従業員にタバコなどの取り扱いの注意喚起を行う

ヒューマンエラーを防ぐには、物理的な対策と同時に「教育」が必要です。 喫煙に関しては、「指定場所以外での喫煙厳禁(全面禁煙)」を徹底し、違反者には厳格なペナルティを設けることも検討すべきでしょう。喫煙所を設ける場合は、倉庫建物から離れた場所に設置し、吸い殻の処理方法(水を入れた吸い殻入れの使用など)をルール化します。

また、避難訓練や消火器の使用訓練を定期的に実施し、従業員一人ひとりが「火災防止の当事者」であるという意識を持たせることが、組織的な防災力を高めます。

消防法で定められた義務とは

物流倉庫を運営・利用する上で避けて通れないのが「消防法」の遵守です。 消防法は、建物の用途や規模に応じて、設置すべき設備や管理体制を厳格に定めています。法律違反は罰則だけでなく、火災保険が適用されない等の重大なリスクを招きます。

スプリンクラー等の消火設備の設置義務

消防法では、倉庫の「延べ面積」や「階数」、「窓の有無(無窓階かどうか)」によって、スプリンクラーの設置義務が細かく規定されています。

条件 設置基準の目安
ラック式倉庫 天井高さが10mを超える部分があり、かつ延べ面積が700㎡以上の場合など
一般倉庫 延べ面積が1,500㎡以上(平屋以外)など、条件により異なる
地下・無窓階 延べ面積が1,000㎡以上の場合など

特に注意が必要なのは、「指定可燃物」(紙類、布類、プラスチック類など)を大量に保管する場合です。EC倉庫ではこれらが大量にストックされるため、一般的な基準よりも厳しい倍数計算での保管制限や、追加の設備設置が求められるケースがあります。

防火管理者の選任と消防計画

一定規模以上の倉庫では、「防火管理者」を選任し、管轄の消防署へ届け出る義務があります。

  • 防火管理者の選任が必要な条件(例):
    • 収容人員が30人以上(特定用途以外)
    • 延べ面積が一定以上

防火管理者は、「消防計画」を作成し、それに基づいた消火・通報・避難の訓練(年2回以上)を実施しなければなりません。消防計画には、自衛消防隊の組織編成や、火気使用設備の管理方法などを具体的に記載する必要があります。 「知らなかった」では済まされない重要な法的義務ですので、自社倉庫や委託先倉庫がこの要件を満たしているか、必ず確認しましょう。

まとめ

物流倉庫の火災は、電気トラブル、リチウムイオン電池、放火、管理不足など、複合的な要因で発生します。これらを防ぐためには、設備の投資、日々の厳格な管理、そして消防法の遵守といった多大なリソースが必要です。

しかし、EC事業の成長に伴い、自社ですべての安全対策を完璧に行うことは、コスト・人材の両面で非常に困難になりつつあります。

「リスク管理も物流品質の一部」です。

もし、現在の倉庫管理に少しでも不安があるなら、物流のアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。 クラウド物流アウトソーシング「NEOlogi(ネオロジ)では、消防法をはじめとする各種法令を遵守し、高度なセキュリティと安全管理体制が整った倉庫のみと提携しています。

面倒な在庫管理や出荷作業だけでなく、「火災リスクからの資産防衛」も私たちにお任せください。 NEOlogiは、お客様が安心して販売活動に専念できる環境を提供します。

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株式会社ネオ・ウィング
 
黛 将広

株式会社ネオ・ウィング 取締役 / 物流代行サービス「NEOlogi」 責任者

物流業務の効率化・業務改善及び、ECに関する一連業務のDX支援など、EC運営経験およびNEOlogiで培ったシステム開発力でお客様の課題を解決します。

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