MSDSとSDSとは?違い・16項目の内容・国際輸送での重要性を解説

化学品や化粧品、リチウムイオン電池などを含む製品を越境ECや貿易で輸出入する際、必ず耳にするのが「MSDS」や「SDS」という言葉です。
しかし、「MSDSとSDSの違いは何なのか?」「なぜ国際輸送にこれらの書類が必要なのか?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、MSDSとSDSとは何かという基礎知識から、MSDSとSDSの違い、SDS(安全データシート)に記載される16項目の詳細な内容、化管法などの関連法規に基づく作成・提供義務について分かりやすく解説します。
さらに、EC事業者や物流担当者が知っておくべき、国際輸送・越境ECにおけるSDSの重要性と活用方法まで網羅していますので、ぜひ実務にお役立てください。
MSDSとSDSとは
結論から申し上げますと、MSDSとSDSは実質的に同じもの(同一の書類)を指します。
かつて日本では「MSDS」という名称が広く使われていましたが、現在では国際的な基準に合わせて「SDS」という名称に統一されています。
ここでは、それぞれの定義と、なぜ名称が変更されたのか、その経緯と理由を詳しく解説します。
MSDS(製品安全データシート)の定義
MSDSとは、「Material Safety Data Sheet」の頭文字をとった略称で、日本語では「製品安全データシート」または「化学物質等安全データシート」と呼ばれていました。
これは、対象となる化学物質や、その物質を含む製品の危険有害性、取り扱い上の注意、緊急時の措置、廃棄方法などの重要な情報を記載した説明書のような文書です。
化学品を安全に取り扱い、労働災害や環境汚染などの事故を未然に防ぐための重要な情報源として機能します。
特に事業者間で化学品を譲渡・提供する際には、対象となる製品に関する正確な情報を伝達するために、このMSDSを添付することが法令で求められていました。
現在でも、製造現場の古い資料や慣例的なやり取りの中では「MSDS」という呼称が使われることがありますが、指している内容は現在のSDSと全く同じです。
SDS(安全データシート)への名称変更の経緯と理由
日本国内において、2012年4月よりMSDSからSDS(Safety Data Sheet:安全データシート)へと正式に名称が変更されました。この変更の最大の理由は、国際的な表記ルールの統一です。
国連が定めた化学品の分類と表示に関する世界調和システムである「GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)」が導入・勧告されたことに伴い、国際的な取り決めとして「Material(物質)」という単語を外した「SDS」という呼称が標準となりました。
日本でもこの国際標準に準拠するため、JIS規格(JIS Z 7253)が改正され、化管法(特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律)や労働安全衛生法などの関連法令においても「SDS」という名称に統一されました。
つまり、MSDS SDS 違いは単なる「名称(呼び方)」の違いのみであり、記載される目的や基本的な役割、記載すべき情報の本質的な内容は同一です。現在新たに書類を作成したり、海外取引先から書類を取り寄せたりする場合は、必ず「SDS」という名称を使用します。
SDSに記載される16項目
SDS 安全データシート 16項目は、GHSに基づくJIS規格により、世界共通のフォーマットとして標準化されています。
これにより、世界中どこでも同じ構成で化学品のリスク情報を速やかに確認できるようになっています。
ここでは、全16項目を目的別に3つのカテゴリーに分けて詳しく解説します。
化学品の基本情報と危険有害性
SDSの前半部分(1〜3項)は、対象となる製品が「何であるか」と「どのような危険性があるか」を示す、最も基本的かつ重要な情報です。
- 化学品及び会社情報:製品名、製造業者や輸入業者の名称、住所、担当部門、緊急連絡先などが記載されます。
- 危険有害性の要約:GHSに基づく分類結果、GHSラベル要素(絵表示、注意喚起語、危険有害性情報など)が記載されます。引火性や急性毒性などを一目で把握できるため、取り扱うすべての人が真っ先に確認すべき項目です。
- 組成及び成分情報:製品に含有されている化学物質の名称、濃度または濃度範囲が記載されます。
安全な取り扱いのための情報
中盤の項目(4〜10項)は、現場での安全確保や、万が一の事故が発生した際の具体的な対応方法に関する実践的な内容です。
- 応急措置:吸入した場合、皮膚に付着した場合、飲み込んだ場合などの適切な応急処置方法です。
- 火災時の措置:適切な消火剤の種類や、消火を行う際の手順、注意事項が記載されます。
- 漏出時の措置:人体へのばく露防止や、環境への流出を防ぐための回収・浄化方法です。
- 取扱い及び保管上の注意:安全な取り扱い方法と、適切な保管条件(温度管理や、混触してはいけない物質など)を示します。
- ばく露防止及び保護措置:許容濃度や、取り扱い時に必要な保護具(防毒マスク、保護手袋、保護眼鏡など)の指定です。
- 物理的及び化学的性質:外観(色、形状、におい)、融点、沸点、引火点、比重などの物理データです。
- 安定性及び反応性:避けるべき条件(高温など)や、危険な有害反応を起こす可能性のある物質の情報です。
輸送・廃棄・適用法令に関する情報
後半部分(11〜16項)は、環境影響や法的な規制、そして輸出入・物流において極めて重要な項目が並びます。
- 有害性情報:急性毒性、皮膚腐食性、発がん性、生殖毒性などの詳細な有害性データです。
- 環境影響情報:水生生物への毒性や、オゾン層破壊への影響など、環境に対するリスク情報です。
- 廃棄上の注意:安全かつ適法な廃棄方法や、廃棄物処理業者へ委託する際の注意事項です。
- 輸送上の注意:国連番号(UNナンバー)、国連分類、容器等級、海上・航空輸送における規制要件が記載されます。物流において最も重要な項目です。
- 適用法令:安衛法、化管法、毒物及び劇物取締法、消防法など、国内外の対象法令が記載されます。
- その他の情報:SDS作成にあたって引用した参考文献や、その他の補足情報です。
EC事業者や貿易の物流担当者にとっては、特に14項「輸送上の注意」と15項「適用法令」が、商品の国際発送や通関が可能かどうかを判断する上での生命線となります。
SDS提供義務の対象と免除される化学品
SDSは世の中のすべての製品に対して作成が義務付けられているわけではありません。
日本の法律に基づき、一定の条件を満たす化学品を事業者間で取引する際に、SDS 作成 義務および提供義務が生じます。
ここでは、主な対象範囲と免除される条件について解説します。
SDS提供が義務となる事業者
指定された化学物質、またはそれを含む製品を他の事業者へ譲渡・提供(販売・輸出など)する際、製造業者、輸入業者、販売業者にはSDSの作成と提供が義務付けられています。
主に以下の3つの法律で指定された物質が対象となります。
- 化管法(PRTR法):環境リスクの高い第一種指定化学物質および第二種指定化学物質を含む製品。これがよく言われる化管法 SDS 対象です。
- 労働安全衛生法(安衛法):労働者に健康被害を及ぼす恐れがあり、名称等の通知が義務付けられている対象物質(通知対象物質)。
- 毒物及び劇物取締法(毒劇法):毒物または劇物に指定されている物質。
これらの法律で指定された物質を基準値(濃度限界)以上含む製品をBtoB(企業間)で取引する場合、サプライヤーは必ず取引先に対して事前に、あるいは製品の引き渡しと同時にSDSを提供しなければなりません。
これにより、取引先が化学品のリスクを正しく把握し、安全に管理できるようになります。
SDS提供が不要な化学品
一方で、指定物質を含んでいても、法律上SDSの提供が免除される(不要な)ケースも存在します。主に以下のような製品が該当します。
- 一般消費者向けの製品:家庭用の洗剤、化粧品、殺虫剤、塗料など、一般の消費者が生活用として購入し、そのまま使用する形態で提供されるものは、SDS提供義務の対象外です(ただし、自主的に作成・提供しているメーカーも多数あります)。
- 固形物(成形品):金属製のパイプ、プラスチック製品、電子部品など、使用中に化学物質が気体や液体として漏れ出したり、粉じんとして飛散したりする恐れがないもの。
- 密閉された製品:乾電池など、通常の使用状態において内部の化学物質にばく露する恐れがないもの。
ただし、ここで注意が必要です。「一般消費者向けだからSDSは不要」というのはあくまで国内の法律上の話です。
国際輸送においては、航空会社やフォワーダーから「該当製品が危険物ではないことの証明」として、一般消費者向け製品であってもSDSの提出を厳しく求められるケースが非常に多いため、実務上は入手が不可欠となります。
GHSとSDSの関係
SDSの仕組みを正しく理解する上で欠かせないのが「GHS」の存在です。前述の通り、GHSのルールが世界で統一されたことが、SDSというフォーマットが確立された決定的な理由です。
ここでは、GHSの基本とラベルの見方を解説します。
GHSとは
GHS(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)とは、国連が推奨する「化学品の分類および表示に関する世界調和システム」のことです。
かつては、国や地域によって化学品の危険性の基準や、それを知らせるマークがバラバラでした。
これを世界共通のルールに統一することで、言語の壁を越えて一目で危険性を認識できるようにしたのがGHSです。
GHSでは、化学品の危険有害性を「物理的危険性(引火性、爆発性など)」「健康有害性(急性毒性、発がん性など)」「環境有害性(水生環境有害性など)」の3つに分類し、それらの情報をSDS(安全データシート)とGHSラベルという2つの手段で伝達することを定めています。
GHSラベルの見方
化学品の容器や包装には、SDSの内容を簡潔に要約したGHS ラベル SDS情報の貼付が求められます。
GHSラベルには、主に以下の要素が含まれており、直感的に危険性を把握できるようデザインされています。
| 要素 | 説明 |
|---|---|
| 絵表示(ピクトグラム) | 炎のマーク(引火性)、ドクロのマーク(急性毒性)、腐食のマークなど、直感的に危険性を伝える9種類の共通シンボルです。 |
| 注意喚起語 | 危険の度合いに応じて「危険(Danger)」または「警告(Warning)」のいずれかが記載されます。 |
| 危険有害性情報 | 「極めて引火性の高い液体及び蒸気」「飲み込むと有害」など、危険有害性の具体的な内容を短い文章で示します。 |
| 注意書き | 安全な取り扱いや保管方法、応急措置、廃棄に関する具体的な指示事項です。 |
このように、GHSラベルとSDSはセットで運用されるものです。
現場の作業者や輸送業者は、まずラベルの絵表示で危険性を直感的に認識し、詳細な取り扱い方法や輸送規制についてはSDSの16項目で確認するというフローが確立されています。
SDSと越境EC・国際輸送の関係
越境ECにおいて、コスメ、ヘアケア用品、接着剤、香水、リチウムイオン電池内蔵製品などを海外へ発送する場合、国際輸送の最大のハードルとなるのが「危険物(Dangerous Goods)」の判定です。
ここでは、なぜSDS 輸出 必要と言われるのか、その理由と活用方法を解説します。
化学品の輸出入でSDSが必要な理由
国際航空輸送(IATA規則)や国際海上輸送(IMDGコード)では、爆発性、引火性、毒性などを持つ物品の輸送が厳格に規制されています。
フォワーダー(貨物利用運送事業者)や航空会社は、荷受けした貨物が「危険物に該当するかどうか」を正確に判断しなければ、安全に航空機に搭載できるか、どのような特殊梱包や申告手続きが必要かが分かりません。
その危険物判定の唯一かつ絶対的な根拠となるのが、メーカーが発行するSDSなのです。
たとえスーパーで買える市販の化粧品や日用品であっても、アルコール成分を高濃度で含んでいれば「引火性液体」として国際輸送上の危険物に分類される可能性があります。
「これは普通の商品だから安全だ」という口頭での説明は一切通用せず、客観的な証拠として必ずSDS(原則として英語版:English SDS)の提出が求められます。
SDSがないと、隠匿危険物とみなされて税関で止められたり、航空会社に搭載を拒否されたりする重大な輸送トラブルに直結します。
14項「輸送上の注意」と国際発送への活用
越境EC事業者や輸出担当者が製品のSDSを入手した際、真っ先に確認すべきなのが第14項「輸送上の注意」です。
この項目を見れば、その製品が国際輸送において危険物に該当するかどうかが一目で分かります。
- 国連番号(UN No.)の記載がある場合:該当製品は国際ルール上の「危険物」に分類されます。
例えば、香水や一部の化粧水は「UN1266(香料製品)」などと記載されます。
この場合、危険物としての適切な梱包(UN包装)、ラベル表示、危険物申告書の作成など、専門的かつ複雑な手続きが必須となります。 - 「非該当」「Not Regulated」等の記載がある場合:国際輸送上の危険物には該当せず、一般貨物(普通品)として輸送可能です。
ただし、輸送業者に「普通品であること」を証明するために、この記載があるSDS自体を提出する必要があります。
このように、SDSは単なる安全確認書類ではなく、スムーズな通関と確実な国際輸送を実現するための「パスポート」としての役割を担っているのです。
MSDSとSDSのよくある質問
ここでは、MSDSやSDSに関して、EC事業者や物流担当者からよく寄せられる疑問をQ&A形式で簡潔にまとめました。
SDSはどこで入手できますか?
製品の製造メーカーや輸入代理店から入手可能です。
多くの場合、メーカーの公式ウェブサイトからダウンロードできるか、問い合わせ窓口に依頼することで(主にPDF形式で)発行してもらえます。
輸出目的の場合は、英語版(English SDS)を発行できるか確認してください。
一般消費者向け製品にもSDS提供は必要ですか?
国内の法律上、一般消費者向け製品への提供義務は免除されています。
しかし、国際輸送を行う際には、航空会社や税関から「危険物ではないことの証明」として提示を求められるため、実務上はメーカーから入手しておく必要があります。
MSDSとSDS、提出する書類に違いはありますか?
記載されている本質的な情報は同じです。
ただし、「MSDS」と表記されているものはGHS導入前の古い基準で作成された書類である可能性が高いです。
航空会社や税関によっては、最新の基準(SDSフォーマットの16項目)で作成された新しい書類を再提出するよう求められることがあるため、最新版のSDSを入手することをおすすめします。
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まとめ
本記事では、「MSDSとSDSとは」という基礎知識から、16項目の詳細、化管法などの関連法規による提供義務、そして越境EC・国際輸送における重要性までを解説しました。
重要なポイントのおさらい
- MSDSとSDSの違い:名称が異なるだけで実質的には同一の書類。現在は国際基準であるGHSに伴い「SDS」に統一されている。
- SDSの役割:化学品の危険有害性を16項目にまとめたシートであり、安全な取り扱いや法令遵守のために必須の情報源。
- 国際輸送との関係:SDSの「第14項(輸送上の注意)」を確認することで危険物判定が行われ、輸出時には航空会社や税関への提出が求められる。
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